多重の虚構の中で,日本語がとんでもなく縦横無尽……

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最近、読了した本です。『アラビアの夜の種族』(古川日出男著・角川文庫)。
聖遷歴 1213 年、ナポレオン軍による侵略の危機に曝されたマムルーク朝エジプトが舞台。ナポレオンの侵攻と、とそれを阻むが為の奸計が同時に進行する多層の構成になっている。企ての中核となるのは『災厄の書』として密かに口伝される物語、それが夜毎、カイロの片隅で語りおろされていく……。




久々、「止まらなくなったらどうしよう……(-"-;;」と感じた本だった。そうなったら本業他に差し支えてしまうので、移動の地下鉄でのみ読むという制約をつけることに……。
書評など調べてみると、全体を通じている衒学的な文体が嫌いという声もあるし、あちこちの“ルビ”がウルサイ!と感じる人もいるらしい。「これ、まるっきり RPG みたいな内容じゃん」「なんだか最後があっけない」という意見も……。たしかに文体も特徴的だし、ほとんどが“アラビアンナイト調・剣と魔法の物語”なので好き嫌いは別れるところかも。
子供の頃から本は好きだけれど、いつも「私は良い本読みではないなぁ」と思う。内容より、テーマより、文体や構成で好き嫌いが出来てしまう。いわば、人を判断するのに、内面より、見た目で判断しちゃうタイプってことかなぁ?でも、それが好きなんだから仕方ないや。そういった点では、全て満足の作品です。
↑で書いた批判は多少感じるけれど、まぁ、それはそれ。例えばルビだけれど、これは日本語ならではの遊びではないかなぁと思う。海外の言語でも似たようなことは出来るのもしれないけれど、素人だし洋書を原文で読んだ事はほとんどないから分からない。ただ、日本語の縦横無尽さをここまで強く感じたのはこれが初めてだ。文章のスタイルも、このストーリーならむしろ適当では?と感じる。全編のどこを切り取ってもそれが印象的なひとつの節になっていて、キメゼリフ満載。入れ子構造になった仕掛けによって多層と思えた物語がひとつに収斂していって……う〜ん、堪能しました。
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『アラビアの夜の種族』
著者:古川日出男
出版:角川書店・角川文庫
受賞:第55回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門
   第23回日本SF大賞
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 夏目漱石の『虞美人草』が朝日新聞に連載されるに際して、『絢爛たる文体、絢爛たる内容』という宣伝文が掲載されたという事だけれど、この本は、まさにそんな感じ……って全然違う?

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by glitter_in_eyes | 2007-03-17 12:37 | 日々雑々
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